強い自制心が伴う過剰な管理には、さまざまなリスクが伴います。
結果として、「楽しさ」の使い方をよく知っていて、行動にゆとりがある人よりも、「自制心が強く過剰な自己管理」をする人の方が、パフォーマンスが劣ることがよくあります。
翻訳:日本ストラクトグラムセンター正規研究員 磯川 友浩
なぜ、簡単にできる仕事もあれば、多大な努力が必要な仕事もあるのでしょうか?
もし、私たちの行動に対して、努力感なく実行できるほどの十分な動機があれば、強い意志が無くても難なく実行できるでしょう。
意志の力が必要な時とは、モチベーションが湧かないことをしなければならないときです。
「意志の力は筋肉のように鍛えることができ、意志の強さ次第でどうにでもなる」とよく言われます。
ある程度の意志と体力は確かに必要ですが、意志の力が強ければ良いということではありません。
意志の力は過大評価されているようですが、
自分を騙し、自分の欲求と戦い、意図的に自分を動機づける能力は、一番の解決策とは言えません。
したがって、本質的な自己認識も必要不可欠なのです。
自分自身の無意識の動機を正しく理解する
このことはとても理にかなっています。
自分の自然な動機に逆らうのではなく、自然な動機に基づいて動く場合、成功の可能性は飛躍的に高まり、目標を達成するために必要な規律やエネルギー、努力は大幅に減ります。
同時に、自分の自然な動機に従った行動を通して良い結果を体験し、新たなエネルギーさえも得ることができるのです。
ストレスが少なく、不快な感情も回避できます。
なぜなら、自分の希望と行動がほぼ一致しているからです。
ミュンヘン工科大学のヒューゴ・M・ケアー(Hugo M. Kehr)教授は、自分自身の無意識の動機を理解することを学ぶことがいかに重要であるかを説明しています。
何が私たちを駆り立てるのか、あるいは阻害しているのか、よりよく理解する必要があります。
「目標やライフプランは、自分の内発的な動機と一致させることができる」とケアー教授は言います。
そうすれば、不快な感情に悩まされることも少なくなり、プロジェクトの実現も容易になり、気持ちも楽になるでしょう。
「楽しさ」を忘れてはいけません
自分に合わない目標を追い求め、そのために常に意思の力で頑張り続けると、失敗するリスクが高まります。
そのような状況で歯を食いしばれば食いしばるほど、意志の力で頑張り続ければ続けるほど、長い目で見れば自らを傷つける危険性が高くなるのです。
もし長期間、並外れた意志の力で自分の自然な動機に反して行動し続けたら、ますます自分の本当の欲求を見失う恐れがあり、これがうつ病や燃え尽き症候群などの精神疾患の増加の原因の一つになっています。
このように、自制心が強すぎるという意味での過剰なセルフコントロールは、さまざまなリスクをはらんでいるのです。
その結果、過剰なセルフコントロールをする人は、「楽しさ」を上手に使いこなしている人に比べて、パフォーマンスが低下することが多いのです。
「正しいセルフマネジメント」で失敗を回避する
特に厄介なのは、意思の力で頑張っている人たちは、自然な動機に従って行動している人よりも、信憑性が低く見えることです。
自然な動機で活動する人たちは、自己肯定感が高く、首尾一貫して説得力があり、本物のように見える自信を放っています。
前述のように、自分にとって不適切な目標は、失敗しやすくなり、自尊心を損なう失敗スパイラルに入り込んでしまうことが多いのです。
したがって、外圧的な目標設定や表層意識の自我の目標を追い求めるのはNGです。
むしろ、自分の中の自然な動機やニーズに合わせて最適な目標を選ぶことが大切です。
そうすれば、できるだけ意志の力を使わずに、努力感なく、目標を達成することができるでしょう。
ヒューゴ・M・ケアーは、このように「正しいセルフマネジメント」を説明しています。