国際化が進み、分業化の拡大、市場の混乱により購買行動が不安定な時代において、創造性や先見性がますます重要になりますが、従来のインセンティブ・システムでは失敗します。
翻訳:日本ストラクトグラムセンター正規研究員 磯川 友浩
(本ブログは、全10回のモチベーションをテーマにしたシリーズの第9回目です。)
学びたくないことを学ばなければならない場合、
報酬と罰という人工的なインセンティブがよく使われます。
この方法は、最初はとてもうまくいくでしょう。
なぜなら、その人の実際の動機について考える必要がなく、単に望ましい行動を調整しようとするだけで良いからです。
このプロセスは、しばしば 教育、トレーニング、指導と呼ばれることがよくあります。
これは簡単に言うと、「ボーナスを受け取るために、通常よりも努力するようになる」という前提に基づいています。
この単純な因果関係の仮説を、さまざまな科学者が詳細に検討した結果、驚くべき結果が得られました。
- 私たちの報酬システムは、特に期待以上のものがあったときに特に有効です。
そして、報酬内容を知らされていない場合が最も効果的です。そのため、業績が好調な年に全社員に分配されるボーナスは、明らかにプラスの効果をもたらします。ボーナス金額が事前に知らされている場合、その報酬の効果はかなり低くなります。さらに、「ボーナスが未達成または満額に達しない場合、やる気をなくす危険性が高くなります。そして、報酬内容が予想より悪いと、モチベーションに悪影響を及ぼしてしまうのです。 - 残念ながら、ボーナスが多くてもあまり効果がありません。
ボーナスの支給額と期待される業績向上との関係は、直線的ではないのです。通常、少額の賞与は業績にプラスの影響を与えますが、金額が増えても、パフォーマンスが同じように上がるわけではないのです。対照実験では、パフォーマンスボーナスを1日分から半月分に増やしても、業績が大きく伸びないことが分かっています。しかし、さらに悪いことに、5ヶ月分の給料がボーナスとして支給された場合、参加者の測定可能なパフォーマンスは著しく低下し、完全に失敗してしまったのです。 - ボーナスやパフォーマンスボーナスは、努力と仕事のスピードが重要視される作業的な仕事で最も効果をがあります。
より多くの認知能力(主体性と思考力)が求められる場合、この相関が無くなり、むしろ負の相関が現れます。パフォーマンスを高めようとして、ボーナス金額を開示した場合、大幅なパフォーマンスの低下に繋がりました。
つまり報酬は、学習やタスクのプロセスを確実にサポートすることを意味します。
しかし、使い方を誤ると、やる気をなくしたり、報酬依存になったりします。
したがって、逆効果を招かないように、if-then報酬は控えめに使い、
なるべく、単なる結果ではなく努力に報いるようにしてください。(特に小学生の子供たちの場合)
そうしなければ、報酬依存を生み出す危険性もあります。
国際化が進み、分業化の拡大、市場の混乱により購買行動が不安定な時代には、創造性や思考力がますます重要になりますが、従来のインセンティブ・システムはまさにここで失敗します。
学習と成長のプロセスを成功させるための3つの重要な結論があります。
1.理想的には、私たち一人ひとりの成長のニーズを認識し、評価し、促進する環境が必要です。
2.成長ニーズは人それぞれなので、全員に対して平等に扱うと、失敗します。
3.環境からの社会的な圧力によって自分の発達欲求に上限が設けられると、苦痛を感じるだけでなく、自己の発達が阻害されます。
理想としては、大小に関わらず報酬が不要になるレベルまで、ゆっくりと、しかし確実に人々を導くことです。
このレベルを「自己動機」または「自己効力感」と呼びます。
そうなれば、自分に何ができるかを知り、現実的な目標を設定し、活動の成果を自ら確認し、批判に耐え、前向きな気分でいれるようになります。
しかし、それは誰にでも通用することでしょうか。
それとも、根本的に怠け者で、やる気を起こせず、中毒患者が薬を必要とするように、
常に外的報酬を必要とする人もいるのではないでしょうか。
権力動機と達成動機は人によって顕著に異なりますが、
依存症患者との類似性から言えることは、人はしばしば自己動機が外部動機(報酬/罰)に置き換わることで
怠け者になってしまうことがよくあるのです。